http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/015/0488/01502260488012a.html
[114]
日本共産党 須藤五郎
私は本日1通の手紙を受取りまして、そのことに関しまして委員長にお願いしたい点があるわけであります。それは別府市の警察内において一朝鮮人が虐殺されたという件について調査をして欲しいという希望が現地から参っておるのであります。
事件の起ったのは2月の21日午前9時頃から別府市警、警察署から市内北野口居住の輪タク業をしておる金在魯という32歳の身柄釈放の通知を受けて、北野口居住の友人2名が受取りに行ったところ、もうすでに留置場の中で冷たい死体となっておった。その死体を受取ったわけです。
それで22日に九州大学の北条博士の執刀の下で解剖に付したところが、左の事実がわかった。一は尿が約1200立方センチメートル体内に溜まっており、排尿されていなかった。この事実は長時間に亘り仮死状態が続いていたことを九大の北条博士がみずから執刀して証明している。第二の条項は、死体の背中一体に亘り無数の打撲傷があり、全身にあるけれども特に背中が甚だしい、頭脳内には外傷なくして多量の内出血があり、これが致命傷と見られた。
ところがこれを警察に報告しましたところが、警察は暴力化した証拠を一言の弁明もしないのみならず、そうして過失死だと警察は言っておるようでありますが、こういうような博士の解剖の結果なども証拠立っておりますので、こういうことが各地方で行われては甚だ遺憾と存じますので、この際この委員会としても調査をして頂きたい。なおここに参考の解剖の写真も同封して来ておりますから、注意を喚起して委員長に善処されたいことを希望して私のお願いを終ります。
関連議事録
昭和28年08月07日 衆議院 法務委員会
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/016/0488/01608070488033a.html
[056]
日本社会党(社会民主党) 木下郁
そこで法務大臣に最初に伺いたいのは、今年の2月19日に別府で金在魯という朝鮮人が酒に酔っぱらってあばれておった。そのあばれた拍子に女の人につかみかかった。で女の人はこわいもので逃げたので、そのつかんでおった拍子に羽織がとれた。それで近所の人が出てその羽織はすぐ持って返ったが、私はその女の人にも会いましたし、女の人も酔っ払いがあばれかかったのだということで、決して羽織をとるための強盗という意味に感じていなかった。
ところが警察はそれを強盗の容疑者としてひっぱって行きました。2月19日の晩の9時ごろであります。で同僚の輪タク屋が行っていろいろ弁解し、酒に酔っていたのだから帰らせてくれと言いましたけれども、それを許さぬ。とうとうとめられて、翌日また友人が行って、そうして身柄を釈放してもらいたいということを言ったけれども、それも許さない。家族の者が行ったんでもありますが、それも許さないで、それで家族の者に着がえを持って来いということでしたので、着がえを持って行った。そしてとうとう翌日の20日の日1日そのまま警察にとめられて、そして21日の朝10時ごろになって身柄の引受けをさせる、帰すから来いというので行ってみたところが、もう死んでおったというのであります。
これは常識的に考えて、だれかが山の中で死んでおったとか何とかいうのであれば、あるいは責任者をつかまえて出すということは、事案のいかんによってはなかなかむずかしい場合もありますが、早くいえばとらになって元気であった者が警察に連れて行かれ、そうして警察に2晩もおって3日目の朝死んだ。そしてこれに対して責任者が出ないということは、その責任者がどういう形で――被害者の側ではこれを警察の拷問の結果だと信じております。さような意味で、それが拷問の結果であるかどうかということはこれは調べなければなりませんが、しかし元気な男が警察に連れて行かれて、そうして元気だったのが2晩の後には死んだ、これに対して責任者が1人も出ないというようなことであったのでは、やはり警察の取調べ、司法権の発動というような意味に対して国民的な疑惑を抱いて非常なマイナスになると考えるわけであります。ことにその死んだ男が朝鮮人であります。一般世間の中には、終戦直後朝鮮人が元気を出したからというようなことであまりいい感じを持っていない者がある。現に私がこの事実を聞きましたので、自分の郷里のことであるから事実調査に参りました。それに対してあなたはそういう問題にあまりかかわらぬ方がいいというような、私に対するごく好意的なほんとうの話もあったのであります。さような世間の実情であります。さような実情でありますけれども、これは考え方によると、また朝鮮におって引揚げた人には、今日本人が朝鮮人からいろいろやられている、しかし自分たちが朝鮮におったときのことを振り返って考えればやはりこれくらいのおきゅうのすえられるのはあたりまえだと私は思います。というような述懐をしている人もあるのであります。さような意味で事柄が朝鮮人の問題であるがゆえに、この際責任者の帰趨というようなものははっきりさせる必要があると思う。その点については大分の検事正も非常に注意して調べておるからということでありましたので、いずれ報告が来ておると思います。岡原刑事局長からでもその点の御報告をいただきたいと思います。
[057]
法務大臣 犬養健
これは大分前に木下委員からお尋ねがありまして、刑事訴訟法その他で延び延びになっておりました責任がございますから、私から御報告さしていただきたいと思います。1人の人間が急になくなったという事件でございまして、きわめて慎重に扱わなければならぬと思いますけれども、相当詳細な報告を求めておりますので、この報告書を読みますと、どうも木下委員の御満足行くようなふうには書いてないのでございますが、読み上げまして、さらに法務委員会の御批判を仰ぎたいと思います。
金在魯氏の死因につきましては、九州大学の法医学教室の北条教授に鑑定をやってもらったのでありますが、その鑑定の結果によりますと、頭腔内の出血により意識混濁し、胃部圧迫により胃内容物を吐き出し、それを気管内に吸入して気道閉塞を生じたことによる窒息死であると認められる、こう書いてあるのであります。金在魯氏はしょうちゅうを当日飲んで大分酔っておられたようであります。
本年2月19日の午後8時ころ別府市内において、別府駐留軍警備員の姫野惇という人に因縁を金さんの方からふっかけて、この姫野という者と格闘中投げ飛ばされ、さらに折井恒貞という者の目付近に金さんの方から、朝鮮人がよくやるあれでありますが、頭突きをやって、かえって自分のやった頭突きのために容態が悪くなって、頭腔内出血を生じたものと認められる。これが北条教授の鑑定であります。
次に別府市警のとった措置はどうかと申しますると、別府市警においては、届出によって金在魯氏を強盗容疑によって逮捕したが、被害者の犯人に相違なき旨の確認を得た上これを留置して、その間金さんを泥酔者と認めて、酔いのさめるまで休養せしめていた、ここが問題だと思いますが、金在魯氏が右のような事情で負傷しておるということにはまったく気づかず、またお医者も酔っておるとばかり思っていた。ここに私は不注意な点があると思うのであります。この点はやはり責任を追究する点であろうと思いますが、そういうわけで、警官としては、お医者さんが酔っておるのだと言うので、酔っておると思ってそこへ寝かしっぱなしにしておった。ここにどのくらいの犯意が認められるか、あるいは責任問題をどのくらい追究すべきか、ここが私どもの考えておる点でございます。ですから表向きの違法かどうかという点では、違法の点は認められないと言っておりますが、心構えあるいは心尽しの点で、私はここが遺憾であったということを認めておる次第であります。
なお留置中に2度お医者の手当を受けさせておるそうでありますが、初診の際はアルコール急性中毒と診断されており、その後約12時間半を経て突然急変のために第2回目の手当を仰いだということであります。
次に姫野惇に対する措置であります。金在魯氏の頭の中の出血は前に申し上げましたように、姫野が金さんを投げ飛ばした行為と、折井恒貞に対して今度は金さんの方から頭突きをやった行為との競合と認められ、一応形式的には姫野の行為は傷害致死罪に考え得る。しかしながら姫野惇は柔道の心得があって、妻君が出産のため、出産の道具を持って病院に急ぐ途中に、金さんに難題をふっかけれて暴行を加えられたため、気がせいていたということもありまして、これを防衛する意味もあって、やむを得ず右の処置に出たものと認められる。また凶器を使ったものでない、右の処置にあたっても相手方の力を利用する消極的な術を使ったのではないか、こういうような報告になっておるのであります。それで最後に姫野は金さんの暴行を避けて逃げた等の事情に照して、防御の行動であったので、それを越えたとはどうも認めにくい、それで本年6月3日、これを不起訴処分に付した、こういう報告なのでありまして、どうも多少御不満じゃないかと思うのでありますが、私どもの得た一番詳しい報告は右のような次第でございます。
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