2019年5月26日日曜日

昭和26年02月08日 衆議院 法務委員会

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/010/0488/01002080488002a.html

[004]
自由党 押谷富三
ただいま議題になっております神戸その他の地における騒擾事件の実情調査報告書原案の説明を私からいたしたいと存じます。調査書はすでにお手元に差上げてありますから、その調査の目的、調査の方法並びに範囲、内容につきましては、申し上げることを省略いたしまして、ここには結論だけを御説明申し上げたいと存じます。まずこの調査から得ました結論といたしまして、騒擾事件の性格でありますが、今回の騒乱は、表面上反税運動、あるいは生活保護、全面就労などの経済闘争や、学校接収反対、民族教育の擁護などの教育闘争の様相を表面の口実といたしておりますが、そうして合法運動を偽装いたしておりますけれども、その集団的計画性や、集団的暴力破壊性などより見まして、暴力革命化の前哨戦としての権力闘争的色彩が濃厚であります。

第2番目に背後関係でありますが、神戸事件、京都事件、大津事件及び名古屋事件は、北鮮系暴力破壊分子、これは朝鮮人解放救援会、民主女性同盟などでありますが、これらの団体と日本共産党地方各級組織及びその支配下にある各種組合団体との合作行動でありまして、大阪事件は共産党員の単独行動であります。また日常経済闘争から政治的権力闘争へ拡大発展しております。すなわち学園闘争、朝鮮人学校騒動、あるいは釈放闘争など日常闘争と、職よこせ闘争、反税闘争、レッドパージ闘争、就学闘争など経済闘争とを、政治的権力闘争へ結合発展せしむることは、共産党の活動の方針でありますが、これとまったく一致いたしておるのであります。

第3に国際的関連性でありますが、朝鮮動乱における戦況の推移と、関西及び中京地区におきます本件の騒乱の推移とは、まったく相呼応いたしておる様相を呈しているのであります。また関西、中京におきます一連の本件騒乱事件は、国際連合軍の協力を妨害する意図をもって企てているような事実が見られるのであります。

第4番に、これらの各地におきまして起りました騒乱事件の共通性でありますが、第1に、この示威運動には学童や婦女子を前面に立てまして、闘争をやっております。これは神戸、大津、名古屋において共通いたしておるのであります。またこん棒、割木、目つぶし――目つぶしは砂にとうがらしをまぜたものなどでありますが、これをあらかじめ準備をいたしておったのでありまして、神戸、大阪、京都などにおいてこれが見られるのであります。また幹部の者はうしろの方で指揮をいたしておって、そうして活動した者は幹部ではない。まったくこの逮捕等を免れるというような行動に出ておることも、一つの共通点であります。第2番目に、警官隊に抵抗ができるように、あらかじめ訓練をいたしておった。この訓練の事実も神戸、名古屋等において見られるのであります。第3番目に、各騒乱は警備力の分散、警察力の分散を意図いたしまして、同時多発的に行われております。第4番目に、各騒乱の間には相互の関連性が認められるのであります。第5番目は、各騒乱参加者は、地元以外の他地区から動員されたものが圧到的に多かったという事実であります。

これらが私どもの調査をいたしましたいろいろの事実から得た結果であります。詳細につきましては御質問等によってお答えをいたしたいと存じます。

[005]
委員長 安部俊吾
次に本報告書原案について質疑に入ります。通告順によりまして、これを許します。梨木作次郎君。

[006]
日本共産党 梨木作次郎
私たちの手元に配付された報告書と、今押谷委員が報告されたものとにいささか違いがあります。まずその点をお伺いいたしたいと思います。それは背後関係というところで、「共産党員(地方各級組織)及び」云々となっております。今お読みになったところでは、共産党及びその支配下にある、こういうように私は聞きとったのでありますが、おそらくこの報告書原案というものは、調査委員がそれぞれ協議されてこういう案をつくられたのであろうと思いまするが、その報告書原案とは違っておるように思いますから、この点についてまずお伺いいたしたいと思います。

[007]
自由党 押谷富三
共産党員と申し上げたのですが……。

[008]
日本共産党 梨木作次郎
この原案には、「共産党員(地方各級組織)」となっておりますが、そういう言い方もされなかったようであります。その点はどういうのでしょうか。

[009]
自由党 押谷富三
それは原案に書いてある通りです。

[010]
日本共産党 梨木作次郎
書いてある通りなら、書いてある通りのようにもう一ぺん報告してもらいたいと思う。

[011]
自由党 押谷富三
それでは背後関係だけをもう一度申し上げます。「神戸、京都、大津事件及び名古屋事件は、北鮮系暴力破壊分子(朝鮮人解放救援会、民主女性同盟等)と共産党員(地方級組織)及びその支配下にある各種組合団体との合作行動であり、大阪事件は共産党員の単独行動であった。」



(略)



[029]
日本共産党 梨木作次郎
了承。それではその次に御質問いたします。第一の性格というところで、「今回の騒乱は表面上反税運動、生活保護、全面就労等の経済闘争や、学校接収反対、民族教育の擁護等の教育闘争を表面の口実とし、」これからが大事なんです。「合法運動を偽装しているけれども」と、こうなっているのであります。私たちの常識では、合法運動を偽装するというような表現の仕方というものは、反税運動だとか、生活保護、全面就労、こういうようないろいろな要求、学校接収に対するいろいろな反対の要求、民族教育擁護の要求、これは実際これをしなければならないいろいろな経済的な、また文化的なそういう要求が現実にあって、そしてその現実的な切実な要求をひっ下げて、いろいろな役所に陳情をするということ、こういうことを合法運動を偽装するというような表現をもってするということは誤りだと思うのであります。少くとも合法運動を偽装するというようなことは、実際は何ら生活に困っておらないのに、生活保護法を適用してもらいたいとか、それから民族教育を何ら圧迫した事実がないのに、民族教育を圧迫しているとか、そういうことを口実にして、そうして陳情するということは――いろいろ役所に要求するということは、これは憲法上保障されている権利だからということで、そういう陳情運動をやる、それがいわば合法運動を偽装するというような表現に該当するかもしれません。

そこで私はお伺いしたいのでありますが、私たちの調査したところによりますと、まず第一に神戸事件のごときも、実際は朝鮮人諸君の生活というものが非常に困窮しておった。そこへ持って来て重い税金がかかって来た。こういう事実が現実にあった。そこで何とか、こういう重い税金を納められないから減免してもらいたいという陳情を区役所に対してやる。

それから生活に困って食えない。事実終戦後朝鮮人の諸君は、終戦直後におきましてはいろいろなやみ屋だとか、あるいはまた長田区におきましては、ゴムの家内工業が盛んであった。これがゴム統制の撤廃の結果、これらのゴム家内工業が全部つぶされるようなうき目になってしまった。そのためにこれらの人々はやはりどうしてもこれでは食えないので、職安に行って日雇い労働者となって働く、ところがそこへ行っても完全な就労はできなかった。大体職安の所長の報告によりましても、1箇月16~17日、それくらいが平均で、あとはあふれておるということを報告しておるのであります。そのために鉄くず拾いをやつても、1日に40円、そういう程度である。非常な生活の困窮であったのであります。そういうことのために、区役所に対して生活保護法の適用を要求に行った。これは現実であります。

こういう切迫した現実の問題、また学校問題にいたしましても、実際はあの神戸教育事件のために学校が閉鎖されてしまった。閉鎖された後におきましての学校経営というものは、当然日本政府においてこの経営費一切を持たなければならぬのが、その経費の支出というものがなされておらない、このために学校の先生の給料の遅配が平均7~8万円に上っておるというような状態、学校はぼろぼろになっておるというような状態、こういう現実があった。だからどうか学校の先生の給料を払ってあげてください、こういう陳情が区役所へ持って行かれるのは当然でありまして、これをすることは何ら非難さるべきことではないと私は思う。こういう現実があって、そこへ陳情に行った。私は調査の結果、こういうように聞いておるのであります。これらの事実を、合法運動を偽装したというような表現をもってするということは、少くとも私は正鵠を欠いておると思うのであります。

そこでお伺いいたしたいのでありますが、今私がちょっと触れましたように、税金の問題についても、生活保護の問題についても、全面就労あるいは朝鮮人学校の問題、これらの問題について今ちょっと私が触れたような事実が、一体調査の結果なかったのか。何もなかったということになれば、あるいは合法運動を偽装してというような表現は許されるかもしれません。

この点について私は、われわれの調査とこの結論とは非常に相違があるのでありまして、納得の行くような御説明を願いたいのであります。

[030]
自由党 押谷富三
梨木君が御調査になった内容は、また別の機会に御報告を受けますが、今例にとられました神戸事件において、長田区役所に詰めかけた朝鮮人は、生活に非常に困窮しておる、税金に困っておる。そこで反税あるいは生活保護法の適用というような要求を長田区長にしておる。この陳情は正しいのではないかということでありますが、なるほど長田区内における朝鮮人が、生活に困窮して生活保護法の適用を受けるとか、反税の要求をせられる陳情は、一応うなずけるのでありますが、その長田区役所に全然関係のない他の地区から、大勢の朝鮮人が出かけたといたしますならば、そのときに用いた言葉と実際とは大分相違していると言わなければなりません。

神戸事件に現われました、長田区役所へ出かけて区長に強談をいたした朝鮮人の行動隊の、ほとんど全部に近い大部分は、あるいは姫路であるとか、大久保、相生、明石、西宮、尼崎、伊丹、こういうふうな方面からかり出された行動隊でありまして、長田区役所の管内にはおらぬ人であります。全部ではありません。ごく一部は長田区役所管内におられたのでありますが、大部分の者は他地区から応援に来ている。こういうような人がこういう暴動、騒乱を起したときは、その要求の言葉は単に表に現われた口実にすぎない、一つの偽装方法であったと考えられてもいたし方がないと思います。われわれは、今梨木君が言われました神戸事件だけの問題をとらえましても、こういう事実がはっきりいたしておるのであります。そこでこの結論を出すに至ったのであります。



(略)



[035]
日本共産党 梨木作次郎
今花村さんからと委員長から御注意がありましたが、実は神戸その他における騒擾事件の調査ということにつきましては、最初からこの事件の背後に共産党があるやに疑われておって、調査の目的の中にもこれの調査がやはりその対象になっておったと思うのであります。そのために私は調査委員の派遣にあたりましては、ぜひとも共産党の委員を1人加えてもらいたいということをお願いしたのであります。私の了解するところでは、委員会では、それは議院運営委員会において、非常に調査委員の数を制限されるかもしれない。まず3名くらいならば共産党を入れるということはどうも困難だと思う。しかし5名くらいになればあなたの方の希望はよく考慮しておくということであったのであります。ところが実際議院運営委員会へ調査委員の顔ぶれとして出されたところを見ますと、5名ではありますが、その中に共産党の委員が入っておりません。そこで私は議院運営委員会におきましても、この点を主張いたしまして、そうして結局におきまして私の方の意見を慎重に考慮に入れて議長がその顔ぶれを決定するというようになっておったと思うのであります。その後私は事務総長にお会いいたしまして、この点も議長は議院運営委員会の審議の状態に徴して顔ぶれの決定を考慮するということになっておるのだから、ぜひ共産党の委員を1人加えてもらいたいということを希望した経緯を話しまして、その点を相談したところが、自由党の方で了解がつけば、いや自由党の方だけではなくて、他の委員諸君との了解がつけば、1名ふやすことも可能である、つまり6名にすることも可能であるということであった。そこで私は押谷さんにもお会いして、その点を申し上げたところが、よかろうということになった。そういうことで、私は当然参加できるものと思っておったのでありますが、それが結局われわれは除外されたということになっております。そういうことのために、実際私がここで質問しなければならないようなことが――事が私の党に非常に重要な関係を持っておるのであります。そうしてこの結論から見ましても、私たちの調査とは非常に違っておるのであります。でありますから、私たちの調査によればこうだ。どうしてこういう結論が出て来るのだということを、私は討論ではなくて、どうしても質問をしなければならないのであります。私たちの党の委員を参加させてもらえば、こういう質問は出なかったのです。だから、ここのところは、先ほど猪俣委員の方からも、この報告書の審議に当りましては、十分――特に調査に参加しておらない共産党の質問や、それから発言については考慮してもらいたいという御要望があり、この点は委員長からも了承するということであったのでありますから、どうか、少しあれでありましょうが、がまんして、ひとつ許してもらいたいと思います。

そういうわけでありまして、今押谷さんのおっしゃったところによりますと、長田区役所に朝鮮人の諸君が交渉に行った。そこで穏やかに交渉した事実もあった。しかしそれは調査の対象になっておらない。私はこれは非常に問題だと思うのでありまして、これは私の方であとでもっと質問いたしたいのでありますが、国会の国政調査の報告書というものは、本来ならば単にこういうできた事件だけを調べるのではなくて、こういういわゆる騒乱事件というものは、どうして起ったかというその原因、これを丹念に明らかにして、そうして人民の利益と幸福に役立つような、よりよき政治をつくり上げて行くためのその資料に、こういう国政調査が行われるものと私は了解しておる。ところが今のお話では、実際は刑事事件的なこの騒乱事件の調査が主目的なようになって来るのでありますが、調査方針の中では、この事件がどういうところに原因があったかということを、まず究明するということは、調査の対象になっておらなかったのでありますか。これは非常に重大なことでありますから、まず調査の方針の中に、この事件がどういうところに最も大きな原因があったのかということの調査、これが調査の対象になっておらなかったのですか。これはどうもおかしいのでありますが、これについてお伺いいたします。

[036]
自由党 押谷富三
当然さようなことは、調査の目的になっております。この騒乱事件がどういう原因から出て来たか、どういうような前後の事情があったということは、相当深く掘り下げて、各方面からの情報を収集しておりますから、今梨木君が言われましたような神戸事件について、11月の17日以後の出来事は、すべてわれわれの調査の対象になっておりますが、その中で報告書に出すのは、特に報告をせなければならぬような事情だけをあげているのであります。梨木君のお言葉の中に、11月20日事件を、非常に穏やかな交渉のように言っておられましたが、それは事実と大分違いますから、簡単に御説明申し上げます。

11月20日の8時ごろに工作隊員であります全相福――これは17ページの終りから書いてありますが、全相福外10数名が、長田区の西神学校周辺の朝鮮人の家庭を訪問いたしまして、市民税で困っている人、生活ができなくて困っている人は、今から陳情に行くから、すぐ学校に来てください、行ってくださいというような狩出しをいたしまして、そうして約80名が集まりまするや、この全相福、権源達が引率をいたしまして長田区役所に出かけて行った。そして言いましたことは、今あなたが言われたように、きょうから食うことができないから食わしてくれ。生活保護法をすぐ徹底して、救貧を行え。朝鮮人に対する市民税を免除せよ、こういうようなことを言って相当強硬に区長に交渉した結果、区長はこれに対して、適当な答えを与えております。それで済めばいいのですが、この回答が不徹底で、誠意がないというので、居すわり態度に出たのでございまして、そのときに西神学校から中学生が200名ばかり教員に引率されて区役所の表で、革命歌を歌う、朝鮮人解放歌を歌う、そうして盛んに気勢を上げて、区役所内の折衝委員に応援をいたしておる。こういうような事態であって、区長も大体軟禁されておる形でありますから、そこで長田警察署は警邏隊66名、それから本部から警邏隊24名を派遣して万一に備えるというような情勢にあったのであります。ところがそのときに、区長が外国人登録証を出してくれ言ったときに、登録証を持っておらない者がある。そこで警察署に連絡をして、これを連行取調べをせんといたしますると、その自動車の前に中学生がすわり込む。そして公務執行の妨害行為に出るというような形になって、ここで検挙者が出て来た、こういうような事件でありますから、これは当然われわれは報告をせなければならぬとして、ここに報告書に出しておるのであります。

24日も、あなたの言われるのと大分違います。この24日にもたいへん険悪な状況において、しかもその参加いたしましたのは、おとなが100名まず集りまして、そして相当喧騒をきわめ、気勢を上げておったのでありますが、それが2隊にわかれて、1隊はおとなが100名、中学生が200名。他の1隊はおとなが20名、中学生が100名、そして一方は区役所へ、一方は警察へというようなわけで、一つの大きな示威運動が始まって来た。こういうような事件でありまして、そのときの目的、そのときの経過は報告書に詳しく書いてありますから、ごらんをいただきたいと思いますが、こうして27日事件が生れて来た。27日事件のまず前哨戦、その以前の状況はこういう状態であるという報告をここに掲げておるのであります。われわれはこの長田区役所、長田警察署、この地方における朝鮮人の動きのうち、相当取上げるものは取上げ、調査の対象になるものは全部にわたって調査をいたしたということを御了承願いたいと思います。

[037]
日本共産党 梨木作次郎
先ほど押谷さんの御説明の中で、検挙された者の釈放の要求ならば、それは当該官庁へ行くべきである。それが区役所へ向って行進したのはやはりおかしいじゃないかという趣旨の御答弁があったと思うのでありますが、この点につきましても、私たちはこう聞いておるのであります。つまり、区長さんもそう言っておりますが、27日には17名が区役所へ来た。そして24日に検束された人の釈放要求のために、警察へ一緒に行ってもらいたいという要望があったというのであります。そこでこの17名来たうちの2名と区長さんが一緒になって、警察へこの釈放を頼みに行った、こういうのであります。その頼んでおるときに、今区役所が襲撃された、こういうふうな報告があったというのであります。そこでこれはたいへんだということで、区役所へ来てみると、何のこともない。15名の代表は静かに区役所に残っておった、こういうのであります。この辺がどうもまことにおかしいのでありまして、区役所が襲撃されたというようなデマが一体どこから出たかということが相当問題であると思うのであります。ところで、帰ってみたら15名の代表は区役所の中に穏やかにおった。その後間もなくデモ行進が来たというのであります。ところがこの15各の人たちは、あんなデモを起してこっちへ来なければよかったのにということをささやいておったということさえ、区長は言っておる。こういうことから見ましても、これは計画的なものでないということが想像されるのでありますが、その前になぜ区役所へ来たかということです。これは24日の検束騒ぎのことで心配して方々から集まって来た朝鮮人の諸君が、西神小学校の広場に集まっておった。約800名とか言われておるのでありますが、ところがその800名を、1000名を越える武装警官がずっと取巻いておったというのです。そしてピストルを見せて威嚇さしてみたりして、これはどうなるのかしらというように、取巻かれた朝鮮人の群衆は非常な不安な気持にかられておったというのであります。これはどうなるのかしらん、このままここにおってはたいへんだということで、それでは区役所へでも行こう、こういう自然発生的な形で、区役所に向って行進を始めた。ところが途中でこれが交差点へ来て、デモが分断されたときに、検束騒ぎが起っておる、こういうふうに聞いておるのであります。そこで区役所へのデモ行進というものはあらかじめ計画されたものでなくて、武装警官の非常な挑発によって、こういう包囲から脱出する一つの方法として、そういう行動がとられたように聞いておるのでありますが、調査なすった調査委員の方々は、その辺のところをどういうふうにお聞きになって来られたか、お伺いいたしたいのであります。

[038]
自由党 押谷富三
梨木君のお言葉と実際とはたいへんな違いがあります。この神戸事件の発端、原因は、警察の方面から挑発したのではないかというようなお考え方があることは、今のお言葉によっても明らかであり、また「平和のこえ」等にも書いてありますから、大体承知をいたしておりますが、それはもうたいへんな間違いなんです。この事件に限っては、警察の方面は決して挑発的な態度に出ておらない。警察が警備に参りましても、物陰に隠れてなるたけ大衆の目につかぬような所に待避をいたしておる、隠れておったというような形にあります。

また特にこの事件についての大きな特徴は、警察はずいぶんたくさんのけが人を出しておりますが、だれもピストルを撃っておりません。警察署長やあるいは市警の本部の方からの指令は、絶対ピストルを使ってはならないというので、そのピストルを出すこともできないように縛っておこうとまで警察官がしたというような事実もあったのでありますが、そこまではしてはいけないというので縛るなどはいたさなかったようであって、そのままにピストルは持っておりましたが、ピストルを使うとか、ピストルによって威嚇をしようとかいうことは厳禁をされておりますから、こういう大きな集団的な問題でたくさんの負傷者を出しておる警察官が、一発もピストルを放っておらぬということは、これはまったく一つの特徴として掲げられるくらいの警察の態度であったと思います。

こうして警察は大衆の感情を刺激するようなことのないように、挑発するような事態が起らないようにというので、彼らのおる場所もなるたけ大衆から目につかない所に隠れておる。そうして衝突いたしましても、ピストルを用いるというようなことは一切避けておるという形でありまして、向うから石をぶっつけられればこちらから石をぶっつけるくらいのことはあったでありましょうが、大体警棒で相手になっておるというような形であって、まことに気の毒なくらいに遠慮しておった。これは警察の方面からはっきり言っておることであり、われわれもその事実を認めております。そういう関係にあるということを御承知願います。



(略)



[058]
日本共産党 梨木作次郎
神戸事件の中で朝鮮人学校の状態を聞きたいのでありますが、朝鮮人学校の経営がどういうようになっておったか。私たちの聞いたところでは。朝鮮人学校が閉鎖されましてその後におきまして、これらの学校を分校として認め、そして経費は日本政府が負担する。具体的には神戸市役所ということになるのでありましょうが……。そうしてこの教科科目の中で、少数民族の教育の自由を認めるべきであるという建前から、朝鮮語、それから朝鮮の地理、歴史、こういうものを教科科目の中に一定の時間をとって認めるようにというような交渉、そしてそれがある程度了解がついておった。

従って学校の経費を日本政府が負担するということになれば、朝鮮人学校の先生の給料も払わなければならないわけになりますが、これが払われておらなかった。平均7~8万円の給料の遅配があったという事実。それから学校がキジア台風のためにいろいろこわれたところができて来て、雨漏りなどがあったというような状態にあったにもかかわらず、当局側はこれに対してこれを修理してやるとか、その他経費を出すということをやらなかったというように聞いておるのでありますが、こういうことをまずお調べになったかどうか、そうしてそういう事実があったかどうか、これをお伺いをしたいと思います。

[059]
自由党 押谷富三
神戸の騒乱事件は、教育関係における闘争という形で現われておりません。関西一円におけるあるいは中京地区を合せた一連の騒乱事件で、教育関係が多少とも結びつきがあるとか、あるいは主として教育闘争によって来ているのは、名古屋と、たしか京都だったと思いますが、そういう原因関係に教育の問題のついておるところはよく調べて参りましたが、神戸の場合は、この騒乱の目的に教育関係は何もうたわれておりません。現われてもおりませんから、従って詳しくは調べておりません。しかし当時私どもは、調査目的ではありませんけれども、一応調べて参ったところでは、兵庫県では朝鮮人学校の閉鎖の後において、朝鮮人が集まって、こういう東神、西神学校の2つがあって、それらが朝鮮人の一つの塾のようになって、朝鮮人子弟をそこで教育をいたしておった。こういうことは認められますが、その程度しか調べておりません。

[060]
自由党 田嶋好文
それでは私の担当した班に関係がありまするので、その点をお答えいたします。

名古屋の騒擾事件というのは、原因を教育問題に持たれておるのでございまして、この点に対しましては報告書に記載通り相当つっこんで調べたつもりでございます。報告書をごらんくださればよくわかると思います。

[061]
日本共産党 梨木作次郎
今の押谷さんの御説明によりますと、塾のような形で経営されておった。それは実際は行政上の技術的な都合がありまして、表面には塾として黙認しながら、実際は日本人学校の分校的取扱いをして、経費は日本政府が持つ、こういう了解ができておったものと私は聞いておるのでありますが、それであるにかかわらず、経費一切を出してくれない、こういうことから非常に経営困難に陥って学校の先生も非常に困っておったということはどうでしょうか。

[062]
自由党 押谷富三
そういうことはないと思います。

日本政府あるいは地方官庁において、それらの学校の費用を持つというような公立学校のような形におけるものでは、西神学校、東神学校ともに、ございません。これはまったく朝鮮人が塾のような形でやるということを黙認いたしておったという程度のものであります。



(略)



[076]
日本共産党 梨木作次郎
押谷さんにもう一度この点を伺いたいのですが、神戸の西神並びに東神小学校、これが朝連解散に続いて閉鎖を命じられた、その後におきまして、これを日本の学校の分校にするということが決定された、それで朝鮮人の方もそれを了承したということを聞いておるのであります。その点はどういうように御調査になっておりますか。

[077]
自由党 押谷富三
神戸においては、朝鮮人学校という存在は公には認めてないようであります。従って朝鮮人学校の費用等も公では出しておりません。ただ黙認しておる。

しかし朝鮮人の仲間においては、民族教育という要求があることは事実らしいのですが、神戸では騒乱の原因として民族教育などの要求は出ておりません。従って神戸では学校問題は調査を詳しくはいたしておりません。私が申し上げた程度であります。

[078]
日本共産党 梨木作次郎
そういたしますと、私の方の調査では、神戸事件の原因の中の一つとしてあげられておる問題は、朝鮮人学校に対する当局の無理解、民族教育に対する抑圧、そういうことがあげられておるのでありますが、調査団の方々は、それは神戸事件の原因として取上げるほどのものじゃなかったということで調査をあまりされなかったというように了承してよろしいのでありますか。

[079]
自由党 押谷富三
梨木君はどこから教育問題が一つの原因になつているとお考えになるのかわかりませんが、私どもは理解に苦しみます。騒乱事件の当時、大衆の声とし、当局に対する要望といたしましては、朝鮮人学校に対する無理解とか、民族教育に対する要望、そういうことは神戸においては絶対にありません。一口もありません。ただ騒乱の集合場所であるとかあるいは騒乱に狩り出された人々の連絡機関が朝鮮人学校の生徒なり、その学校そのものを利用されたことは事実でありますが、その程度で教育問題というものがこの騒乱には現われておりません。

[080]
日本共産党 加藤充
押谷委員とはちょうど大阪で私同職なんですが、大阪、京都を中心として、あれは22年の春だったか、23年の春だったか、いわゆる朝鮮人の教育、学校問題で大問題が起きたことがあるのですが、やはりこのたびあなたの方がたまたま御選択遊ばされてお調べになったところが京阪神を中心にした地域なんです。たまたまの結果にもせよ、今度の中心は朝鮮人の問題なんです。それから前のときは、あれほど天下の耳目を聳動してアイケルバーガーさんか何かが非常事態宣言を出して云云の問題が出たほどなんです。こういうふうな問題なんで、あの辺に行かれまして、朝鮮人の騒擾問題、いわゆる括弧づきの問題をお調べになるときには、やはりこの点を意識的に、徹底的につっ込んでお調べになるのが当然だと思う、常識だと思うのですが、そういうやり方で、御態度で調査に御終始遊ばされたかどうか、その点をひとつ念のためにお聞きしたい。

[081]
自由党 押谷富三
朝鮮人の学校騒動とかいうことであれば、その学校は十分調べて来ますけれども、たびたび繰返します通り神戸における騒乱には、その原因として民族教育とか、朝鮮人学校とかいうことは、要望としては現われておりません。ただその学校が場所的に利用された、あるいは生徒が連絡機関であるということで、その生徒はどこから来てその場所はどんな場所であるかということは、現場へ参りまして親しく調査はいたしましたが、教育自体については関係がありませんから、その点に行きますと、今田嶋委員からお答えになりましたように、名古屋であるとか、あるいはまだ答えておりませんが、京都であるとかは、相当教育関係に影響がありますから、それは十二分に調べて来たつもりであります。



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