http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/007/0488/00702100488006a.html
[002]
民主自由党 田嶋好文
それでは私より、ただいま委員長からお話がありましたように、金沢刑務所、福井刑務支所集団逃走事件並びに福井県今立国家警察署の放火事件並びに福井地方裁判所、同地方検察庁武生支部の放火事件、鳥取地方裁判所、同地方検察庁の米子両支部の怪火事件等につきまして、先般法務委員会より田嶋好文、武藤嘉一、猪俣浩三、大西正男の4委員が調査のために派遣せられたのであります。この調査の結果をここに報告申し上げます。
(略)
[034]
民主自由党 田嶋好文
次に金沢刑務所、福井刑務所の集団逃走事件につきまして、御報告を申し上げます。この集団逃走事件は、当時福井市におきましては、相当やかましく言われまして、人心を撹乱したところの事件でありますが、その事件の内容として当時言われた事柄はこういうようなことであります。
福井の刑務所に収容せられております男に窪田暹というのがおりますが、この窪田暹という男は前科数犯、しかもこの前科は傷害、恐喝というような前科が数犯あるのでありまして、現在も恐喝のために1年半の懲役刑を受けまして服罪いたしております。この男の身分関係はと申しますと、今福井県下で一番大きな暴力団の親分として言われておる団体に津一家というのがありまして、これは津原某が主宰しておるようでありますが、窪田はその津原の兄弟分に当っております。この窪田が主謀者となりまして、当時福井刑務所に収容をせられておりました、既決囚ではございません被告を中心といたしまして、集団逃走の計画が樹立されたということであります。
集団逃走の計画をいたしました連中は、常に刑務所内の休憩遊戯場を利用し、また書信場を利用いたしまして、放火につきましての打合せを行っておったようであります。この放火についての打合せが一応完了いたしますや、彼らは昨年の10月16日を期しまして、窪田が外部の団体と連絡をいたし、外部からはピストルをもってこれが応援に当った。内部の者はこれに呼応して房を破壊いたしまして、集団行動をもって、監視等に暴力を加えてその抵抗をはばみ、刑務所に放火をいたしますと同時に、全員が火の中をくぐって逃走するという計画があるものといわれておったのであります。
この事実を確めるがために、私たちは窪田を中心にいたしましていろいろと調査いたしましたが、その調査の結果こういうような事実が判明いたしました。
窪田は刑務所に入っております共産党員であるところの千震昊、新田某という連中と、運動場におきましてしばしば面接をして、何か話をしていたばかりでなく、窪田は共産党入党を勧められたような事実もあるばかりでなく、共産党入党の決意をいたしまして、これが手続をする必要も考えられるのでありますが、共産党の福井地区委員でありますところの小林義親という者に刑務所から書面を出しまして、小林義親を呼びまして、9月の12日に小林と窪田が面接をいたしておるのであります。面接の問答はあとで御報告申し上げます。
なお窪田は先ほど申し上げましたように、津一家の兄弟分であります関係上、その16日を中心といたしまして、津一家の連中とひんぴんとして面接が行われております。まず津の親分でありますところの津原が窪田のところに今まで来ていなかったのに、その日を中心といたしまして2回面会をいたしております。津原の妻も面会をいたしております。また先ほど法務総裁から団体等規正令に触れるものとして解散を受けた和田組というのが武生にあるのでありますが、この和田組の主宰者和田が同様窪田に面会をいたしまして、いろいろと話をいたしておる事実も上っております。和田ばかりでなく、津の一家に伊加賀その他暴力団の一方の親分があるのでありますが、これらも放火の日を中心にして窪田に面接しておる。今まで面接の少かった窪田が、その日を中心にして津一家の暴力団とひんぴんとして連絡がとられておった。どういう話が行われたかわかりませんが、連絡話合いが行われておった。こういう事実が現われておるのであります。
また窪田は朝鮮連盟に属しておりますところの共産党員である千震昊、それからこれは共産党員でないのでありますが、洪成杓、それから林銀洙というような人間とは、この刑務所の中においてしばしば交渉が行われ、連絡がとられておった事実が調査の結果わかりました。
この事実のみによりましては、やはり先ほど言われましたところの集団放火逃走というような、まだ裁判となるべき資料は現われておりませんので、検察当局といたしましても、放火等の嫌疑に対する起訴はできなかったものと見えまして、一応はっきりした事実のもとに、これらの事件は福井刑務所の集団逃走未遂事件といたしまして起訴をされておるようであります。その人たちは窪田の指図に従ったというところの茂住金太郎、森川國夫、朝鮮人の林銀洙、岩本政一、橋本稔、正木安夫、藤井澄太というような人間になっております。
起訴状の事実は、その被告人等はいずれも福井刑務所に勾留中の未決または既決の囚人であるが、共謀の上昭和24年10月14日夜12時を期し、同所から逃走することを企て、被告人茂住金太郎が竹製のはし、または帯皮の金具、金属破片等を使用して、第1舎未決房第14房の表壁の一部を破損したのが発覚し、その目的を遂げなかったものであるという事実になっております。
こういうようなはっきりした事実で現在裁判が係属いたしておりますが、その他の事実につきましては、いまだ捜査当局において捜査中とわれわれは報告を受けました。以上が福井刑務所の集団逃走事件の報告すべき事実であります。
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